イントロダクション

「経年劣化」は、土屋トカチ監督が10年の間に自身で撮りためた「3分間ビデオ」から9作品を選び、ロックアルバムのように綴る短編だ。故郷、解雇争議、NHK集金人、カフェ、両親、友人などをモチーフとした、セルフドキュメンタリー集で、他に類をみない野心作である。

 「3分間ビデオ」とは、文字通り3分間以内で制作する映像表現だ。1999年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で、ビデオアクト(注1)が開催したVIDEO ACT!スペシャルプログラムが誕生の契機だと言われている。プログラムに参加したビデオプレス代表の松原明氏は『スピーチは3分が標準的な時間。ビデオも3分なら、どんなまずいものも耐えられる。どんな人でも参加できる「3分間ビデオ」コーナーをやろう』と企画したという。ビデオアクトが主催したオムニバスビデオ企画は8回を数えた。松原氏が共同代表を務めるレイバーネット日本(注2)は、年末にレイバーフェスタを開催し、「3分間ビデオ」のコーナーが目玉企画となっている。集まった作品は250本を超える。また、松原氏と土屋トカチの二人は川崎市アートセンターやNPO法人MediR 等で3分間ビデオ制作入門講座の講師も担当している。

 

(注1) ビデオアクト

1998年発足。主宰は映画監督の土屋豊氏。もうひとつの映像ネットワークとして、様々な映像作品の普及・流通をする活動を行うグループ。ビデオカタログの発行や、ウェブ上での作品販売、隔月開催の上映会等を行う。
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注2) レイバーネット日本 
2001
年発足。日本における労働運動・文化運動を主軸とした情報ネットワーク。個人の自律性・自主性によって運営される参加型の組織で、インターネットを活用した労働運動・市民運動を展開している。月2回のインターネット放送「レイバーネットTV」、夏開催の「レイバー映画祭」、年末開催の「レイバーフェスタ」などが主な活動。