経年劣化 ３分間ビデオ集2002～2012
スタッフ
2012年末、３分間ビデオの短編をまとめた作品集「経年劣化」の制作を思いついた。終盤に収録した「これじゃない」(2012）を作った直後だった。親友の死をモチーフにした作品だ。この先、自分自身が映画監督として生きていくために、己の人生をまっとうするために、次の段階へ進むために必要だった。完成したものの、そんな個人的な思いのつまったものを発表するべきなのか？費用は回収できるのか？自問自答の日々･･･。知り合いの出版社や友人にも相談した。反応は芳しくない。意図的に「経年劣化」との距離をおいた。
親友の死から１年が経ち、法事に参加させてもらった。松江哲明監督の著書「映像作家サバイバル入門」（フィルムアート社刊）を読み、背中を押された。揺るぎない決心が僕の中にできたので、リリースすることにした。３分間ビデオの作り手は増えたけど、アルバムにした人はまだいない。オムニバス映画でなく、オリジナルアルバムとして発表したい。
しんどい時にビデオカメラを通して観た世界を、シンガーソングライターが曲を紡ぐように３分間にまとめた９作品。映像を観る感覚ではなく、音楽を聴くように観ていただければ嬉しい。手に取ってくれてあなた、どうもありがとうございます。一度でなく二度三度、音楽のアルバムのように、あなたのＤＶＤプレイヤーにこのディスクが乗ることを願って。
2014年1月 土屋トカチ
土屋トカチ 1971年京都府生まれ。新聞配達・書店員・工場請負作業員・日雇い労働等を経て、99年より映像制作を開始。同時期、現所属事務所の映像グループ ローポジションのメンバーと出会う。映画監督としての劇場デビュー作「フツーの仕事がしたい」（08年）、英国・第17回レインダンス映画祭、UAE・第6回ドバイ国際映画祭において、ベストドキュメンタリー賞を受賞。国内外の映画祭で評価された。